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 梅宮志乃、25歳。これまでの人生、恋愛も仕事も、流されるまま、なんとなく生きてきた。植物だって、買ってはすぐに枯らしてしまう。こんなの、ダメだって気づいている。きちんと毎日、水をあげて、恋も仕事も植物も、育てられる女になりたい。そう心機一転、引っ越しをしたその夜、新しい隣人とベランダ越しに出会った。彼の笑顔を見た、その瞬間、私の心に……風が、吹いた!  原作は、『テケテケ★ランデブー』『溺れるナイフ』『平凡ポンチ』などエモーショナルでリアルな恋愛マンガの名手として幅広い層から絶大な支持を得る、ジョージ朝倉。『ピース オブ ケイク』(全5巻)は2003~2008年にかけて『フィール・ヤング』(祥伝社)で連載された、著者の代表作のひとつだ。

 若さゆえ、無邪気でどこか向こう見ずな恋の空気感。『ピース オブ ケイク』に流れる、 等身大の恋愛感覚を的確に表現するのは難しいのではと当初、映画化は難航した。しかし、この監督なら是非作品をお任せしたいと、ジョージ朝倉が快諾したのが、映画監督・田口トモロヲ。俳優やナレーターとしても活躍する一方、『アイデン&ティティ』『色即ぜねれいしょん』など監督としても高い評価を得てきた。これまで、ロック・ミュージシャン、男子高校生を主人公にほろ苦い青春の1ページを瑞々しく切りとってきた田口監督。今作で“25歳・女子のリアル恋愛”をいかに描くのか、注目したいところだ。

 原作では、恋愛に翻弄されてしまう“恋愛ベタ”ぶりが多くの女性たちの共感を集めた主人公・志乃。その志乃を演じるのは、映画、ドラマなどで幅広い役柄を演じ分け、若手ながら実力派として知られる多部未華子。イキイキと恋する女性を体当たりで演じ切り、新しい大人の魅力を開花させている。志乃が新しいバイト先で出会う、店長の京志郎には綾野剛。ミステリアスな今カノ・あかりとハツラツとした志乃の間で気持ちが揺れ動きながらも、どこか能天気で屈託のない愛すべき“ヒゲ店(京志郎のあだ名)”を軽妙に演じていく。多部未華子と綾野剛。初共演となる2人が描き出す、甘く可笑しく切ない、恋のムードは大きな話題となりそうだ。

 志乃と京志郎の友人や仲間たちにも贅沢な顔ぶれが揃った。志乃の親友で、彼女にバイト先や劇団の衣裳の仕事を紹介する世話焼きオカマの天ちゃん役の松坂桃李をはじめ、木村文乃、光宗薫、菅田将暉、柄本佑など個性的な若手キャストが揃う。さらに、田口組には欠かせない峯田和伸が本作にも参加。劇中に登場する、「劇団めばち娘」の座長・千葉に扮し、劇中歌「たやすいことよね」「風よ吹け」では、その熱い歌声も披露する。また、主題歌「ピース オブ ケイク ー愛を叫ぼうー」には、圧倒的な歌唱力とマルチな才能で若い女性から支持を得る加藤ミリヤが参加。彼女が、以前からファンだったという峯田をフューチャリングし、女性、男性それぞれの視点から相手への想いを歌う、切ないラブ・ソングを届け、映画のラストに心地よい余韻を与えてくれる。主題歌の作曲のほか、映画に心地よいテンポを与える音楽を手掛けるのは大友良英。

 さらに、田口監督がこだわったリアル感漂う東京カルチャー視点で映画を観ても面白い。撮影は、ほとんど高円寺や阿佐ヶ谷などの中央線沿線や下北沢エリアで行われ、生っぽい東京の空気を作品に漂わせる。また、「劇団めばち娘」の劇中劇は、新進気鋭の「劇団鹿殺し」が手掛けるという本格さ。宮藤官九郎、廣木隆一らがゲスト出演しているのも演劇・映画好きなら反応してしまうポイントだろう。田口監督だからこそ描けた、イキイキとした東京の若者たち。その彼らが必死に駆け抜ける恋愛は普遍的な輝きを放つ。「本当の恋」はきれいごとばかりじゃない。カッコ悪いことも、間違っちゃうこともリアルに描いた、恋が本気でしたくなるラブストーリーの登場だ!